NO.7 「一休さんの収納術」・・・・景色や光を工夫して
エッセイ
一休さんはなかなかの知恵者でした。夜空に光る美しい満月を殿様に献上しようと、水の入ったおけに見事満月を収納したのです。とてもウィットに富んでおり、私達にとって不可能と思いがちなことを考え方一つで夢を実現してくれたのです。
長岡ニュータウンに建築したWさんの場合は市街地から離れて生活をするため、「離宮」というコンセプトで計画が始まりました。敷地は東側に丘陵地、絶好の 景観が確保できています。借景という手法を取り入れ、大きなピクチャーウインドーを設けることにしました。リビングからは、絵のように四季折々の景色を堪 能できると、喜んでいただけました。これは、まさに一休さんに学んで景色を収納した事になるのです。さらに進んで、「光の収納」について考えてみましょ う。
二世帯同居希望のMさんは建て替えるに当たり、一番の目標は「明るい家が欲しい」でありました。というのも従来の住まいは、とても暗かったのです。東南の 方向が道路に面しているにもかかわらず、廊下越しにしか部屋に光が入らないようにプランニングされていたのです(第一の原因)。また、朝日の入る東側にビ ルの高さにして約四階建ての新幹線の高架橋がそそり立っています(第二の原因)。
家族が行き来するのに、廊下は不要であるという共通認識から出発しました。建物の配置は居室部分に採光をとるために東南のL型道路に面するように配置する 必要があります。しかし、このことは同時にアプローチ・玄関を西側に置くことになります。「明るい家が欲しい」というテーマが、居室でかなえられても、玄 関が暗かったら効果半減になります。そこで玄関には、一坪弱の光コートをとることにしました。この隣家との間の坪庭は、予想以上に効果的でした。第二の原 因克服のために、リビングに面積にして約一坪の三角形の採光スペースを張り出させました。出窓風三角形壁面を作り、できるだけ南側の光を採り入れようとい う装置にしたかったからです。全面に配置されたカーテンブラインドは必要なときに、必要なだけ出し入れできる光の収納ボックスの扉なのです。
収納は、「固定概念にとらわれない」が、テーマにあります。つまり「収納」という言葉をさまざまな観点から見直し、幅を持たせることが大切なのです。住まいの実質的価値である「物の収納」に加えて、「光の収納」を考えることは、個性ある豊かな住まいづくりにつながります。