高田清太郎ブログ

NO.24 「生活空間の変化」・・・・居場所から活動の場に



エッセイ

権利と義務が裏腹に存在するように、私たちには悲・苦が深ければ、その分余計に喜・楽を大きく感じる取ることができる感性も同時に与えられているのです。雪は人々に多くの苦役を強いています。しかし、同時に雪国なればの恵みの大きさを雪国人のだれもが知っています。
幼き日には春がどんなに待ち遠しかったことか。さらに、おいしいお米とお酒は雪がもたらす豊富な水源のおかげでもあります。スキーはウインタースポーツの花形。雪国から逃げ出さないようにと神様が贈ってくれた代償の数々を挙げればきりがありません。
それにもかかわらず、夏のスポーツを楽しむ人々にとっては、冬の長さは我慢できないことなのでしょう。近年では、さまざまな屋内施設の整備が進み、運動不 足の解消方法も選べます。「冬も身体を動かしたい。屋内施設といったかしこまったものではなく、毎日の生活の中で気軽に!」そんな要望は大変多くなってき ています。

四国出身のTさんは、三島郡越路町に移り住んで二十年。雪国の生活で一番困ったのは冬期の運動不足と、大好きなゴルフができないこと。建て替えの第 一希望は、「ゴルフの練習ができるスペースがほしい」でした。ゴルフの打ち込み練習は大きな音が出ることから、車庫上の中二階に平面配置。スイングの形を そのまま表わした軽快な外観は、この住まいを象徴するように意匠しました。
室内は、天井を高くし壁にむく材を使用した豊かな空間。またアフターゴルフのために部屋のコーナーに喫茶のできるバーカウンターを設け、仲間達が集まるかっこうの居場所、リフレッシュルーム(談話室)にもなってくれています。
長岡市のHさんは、冬でも屋内でバスケットのシュート練習ができるようリビングに吹き抜け空間を設け、ゴールリングを取り付けました。ここでの練習は中学 生の子供が県大会の選手になる一役を担ってくれています。Sさんは卓球場を作り、Kさんはアスレチック広場を設けました。ブランコや滑り台に至っては雪国 人には建築時の必需品になるのかもしれません。
住まいの中に居住用途以外の機能を持ち込むことは、閉鎖空間から開放されるのみならず、運動不足解消という性急的な一次的要望から踏み出してきたのです。まさに、雪国の生活空間が変わり始めているのです。
家は単なる居場所ではなく、何かをする活動の場所。その知恵は、住まいづくりを通して「冬を楽しむ・楽しみながら春を待つ」仕組みを作り上げようとしているのです。