高田清太郎ブログ

NO.31 「デザインソース 2」・・・・身の回りに豊かな題材



エッセイ

現在はグローバルな情報化時代です。建築における情報化時代の是非論はともかくとして、グローバル化によって全世界一辺倒な形になってはなんとも味気ない話です。
「建築家のいない建築」という本には、世界中に点在する自然発生的、地方性豊かな独特の建築群が紹介されています。プロセスがさまざまなだけに生まれるデザインも千差万別です。
月夜の晩に愛犬チロと散歩に出かけた私は、近くの田んぼでとても感動的場面に出合いました。
月の明かりに映し出されたポンプ小屋と白いかやを掛けられたぶどう棚の饗宴です。ポンプ小屋はブロック構造で男性的・硬さを表現しており、線構成のぶど う棚は透過性と繊細さを表現しており、妙に女性的でもありました。両方とも二メートル×三メートルの長方形で、二つの間には用水路が横たわっているので す。この美しいオブジェを「ロミオとジュリエット」と呼ぶことにしました。
「シンプルで四角い店舗を作りたい。」ショットバーを経営するH氏の突然の依頼は、単純明快でした。インスピレーションで、ポンプ小屋とぶどう棚(ロミ オとジュリエット)の構成を使うことにしました。建築地は長岡ドームの南隣。打ち放しのコンクリートボックス(ロミオ)と木材の長木と工事用の安全ネット (ジュリエット)を組み合わせることにしました。夜にはコンクリート塊と長木とネットの線のコントラストがとても美しい。しかし、このネットも取り外され るまでの一週間の命。まさにロミオとジュリエット物語そのものでした。
内部は二本の丸太が屋根のコンクリート床を支えています。ブラック一色の壁面と天井は、二本の樹を包み込むメルヘンの世界を誕生させることにもなったのです。
自分たちの住んでいるすぐ近く、身の回りに豊かなデザインソースが溢れていることを忘れがちです。なぜなら、そこに住む人にとってはいつも日常的・土着的であり無名であるのでそれが目に留まらないからです。
桂離宮の美しさを言及したのはドイツ人建築家のブルーノタウトであることがそれを証明してくれています。「発見者はいつも外部からやってくる。」とは本当です。