高田清太郎ブログ

NO.39 「内と外の境界①」・・・・豊かな空間、交互に演出



エッセイ

地球上には気候風土が織り成すさまざまなしかも、独特の形が存在します。住まいの形もその土地の叡智が作り出した必然的なデザインと言ってよいかもしれません。過酷な自然から身を守るために人は住まいを作ってきました。
昔は雨露をしのぐ程度のことを思っていたのでしょうが、今は室内で春夏秋冬を通してTシャツ姿で過ごせる環境が求められています。同時に、省エネルギー下での要求でもあり、高気密・高断熱化が大道を闊歩するのもうなずけることです。
外気が即室内空間に影響を及ぼした時代感覚から見ると住まい方における落差の大きさに目を見張ります。
常に歴史を振り返り、先人たちが作ってきた『人間の居場所』を原点から考え直すのもとても意義あるものと思います。そこで『内と外の境界空間』をキーワードに数回に分けて考えてみたいと思います。

第一回目は日常に見る内と外の空間です。例えば神社の境内の入り口にある鳥居をくぐるとまさに境界線の内側領域の中に入った環境になります。精神 的にはまさに内なる空間ですが、当然のことながら雨露はしのげない意味では外なのです。 つまり、内と外の交差する空間なのです。
もっと身近に玄関で考えてみましょう。屋根庇や玄関ポーチの下では雨宿りができるから内の空間ですが、温度や風に対するバリアーはありませんからまさに外 空間です。玄関戸を一足踏み込めば内空間であることは異論の無いところですが、土足の意味では他の室内空間と一線をかくした他の室内空間といえるかもしれ ません。
Kさんのお宅は、雪国の特徴である長い雁木アプローチを通って玄関へ導かれます。さらに玄関タイルは居間に入り込みインドアテラス空間と化し、再び裏のコートにつながります。内と外が交互に演出され建物全体に流れをつくることに成功しました。
このように見ると内と外の境界は固定された線でもゾーンでもないことに気がつきます。それは、メンタルな部分と物理的なとらえ方・組み合わせで変化していくといってよいかもしれません。それだけに、内と外の交差する境界ゾーンは豊かな空間が秘められているのでしょう。