高田清太郎ブログ

NO.40 「内と外の境界②」・・・・玄関は常に気持ちよく



エッセイ

朝、人を送り出すときのあいさつに、『行ってらっしゃい』があります。もちろんこの言葉は『行く』+『いらっしゃい』から成り立っていますが、なに か追い払われるような響きをぬぐい去れません。対照的な言葉に、京都言葉『はよう、お帰りやす』があります。なんと暖かい送り言葉でしょう。
もし、玄関戸が引き違いではなく、ドアであったら「行ってらっしゃい」は”外開きドア”に似合いそうです。対する、「はよう、お帰りやす」は、迎えようとするニュアンスが強く”内開きドア”が似合いそうです。
玄関が、招こうとする行為と追い払おうとする行為の両方を兼ね備えていることは否めません。
欧米の住宅の玄関戸は内開きであるのに対して、日本住宅のほとんどの玄関戸は外開きです。気候風土のためだともいわれています。つまり、日本は高温多 湿であり、水切りのために外を低くするからです。しかしそれ以上に、土足生活でない日本人の住まい方は、玄関で靴を脱ぐ行為によって内外を仕切っているの です。もし玄関自体がそんなに広くなく、内開き戸であったとしたら、並べられた靴は開閉されるごとにドアに一掃されてしまいそうです。

玄関は家の顔ともいわれ、靴の置き方一つでその家の住まい方を垣間見ることができるのです。多世帯、大家族の場合は靴の数も大変多くなります。そ んな時、玄関の中に内玄関風に格子戸を設け、下足収納コーナーを取れば、雑然さはなくなります。さらに照明や飾り棚で上手に演出したり、シースルーできる 庭をとると一層伸びやかな空間が出来上がります。
また玄関内にベンチを設けると下足行為が楽になるばかりでなく、季節を演出する空間としても重宝します。
さらに玄関を一畳か二畳増やし、テラス風チェアを置くと、おしゃれな応接空間が誕生します。玄関が土縁やインドアテラスとつながったりすれば、豊かな空間としてそれこそ孤立化も生まれないことでしょう。
居室を優先すれば玄関は機能だけでよいと考えがちですが、社会との接点でもあり、おろそかにできない場所でもあります。機能にも意匠にもあれこれ工夫をし、住人にも来訪者にとっても気持ちのよい空間にしたいものです。