NO.50 「空間をつなぐ階段」・・・・立体的プランで快適に
エッセイ
斜め段板の階段(左上)、階段下の光のステージ(右上)、天窓を持つ二重吹き抜け階段室断面(左下)と外観(右下)
住まいづくりをするとき、最初にすることはプランニング (平面計画)です。プランの検討を通して使い勝手の検証をすることは大変重要です。しかし、そのとき階段室も平面的にとらえてはいないでしょうか?「階段 の位置に苦労するんだよな!」という嘆きをよく耳にします。確かに平面的プランに比べると立体的に考える事には慣れていないからかもしれません。
階段は、上と下の階をつなぐという機能をもっています。「快適性のある階段はどんなものか?」と問えば一般的には「け上げと踏み面の関係」、「階段幅に手すりの組み合わせ」と回答されます。それでも身長の差や歩幅の違いにより一概に言えません。
階段幅も広いほどよいのでしょうが、全体の延べ面積から階段にはぎりぎりの幅しか与えられないのも現実です。
その時はあえて階段の段板を斜めにすることによって、段幅を広く見せることができます。ちょっとしたトリックで一割、二割の広がりを確保できるのです。
最近、三階建て住宅も増えてきました。車いす生活でもせめて二階までは、リフターで行きたいと思ったとき、一階と二階をつなぐ踊り場は90センチ幅では足りません。
倍まで増やしてやると、とても快適です。二階から三階の踊り場幅はそのままですから、階段室に二重の吹き抜けができることになります。その空間は踊り場ギャラリーとしても楽しめます。
日常使う階段のほかに二ヵ所目の階段として子どもたちに人気のあるはしごやろく棒を造ると、断片的にも回れる動線を確保でき行き詰まり感が無くなり、住 まい全体がとても大きな空間に変身します。特に、ろく棒は二階からの垂直な滑り台。空間全体を引き締めるアクセントにもなるので、お勧めです。
また階段室は、その機能を超えてインテリアポイントとしてもとても有効です。広い玄関ホールの中心に取られたSさん宅の階段室の場合、階段下部を開放 し、床に照明を組み込ませ、光のステージ風にデザイン演出してみました。ライトアップされた階段室は、家全体のシンボルになっています。空間は平面プラン と断面セクションで考えることが大切です。道具である階段の存在をどこまで前面に出すかで、住まいづくりの景色が変わってくるからです。