高田清太郎ブログ

NO.52 「空間をつなぐ天井と塔屋」・・・・開放への要求を満たす



エッセイ

雲間天井をした機能回復訓練室(上)、ガラスブロック塔屋とセクション(左下)、

街路樹の廊下(中)、廊下の上に採光塔屋が見える個人宅

 

 

空間を考えるときには、一般的に室内と室外で考え、区切る部位の代表として壁面と屋根面をあげることができます。また「区切る」ことは反対に「つなぐ」ことを同時に考えさせられることでもあります。
窓・開口部は原始人には大切な要素でした。真っ暗やみの洞穴の中にある頭上高くに開けられた一点の開口部から差し込む月光に、人たちはどのくらい慰めと安らぎを与えられたことでしょう。
二年前に計画した田宮病院(長岡市)の痴ほう疾患治療病棟の改築工事においてのテーマの一つは「開放されたいという欲求を満たす外部空間をいかに室内に造るか?」でした。そこで室内外を相互貫入させる空間を提案いたしました。
機能回復訓練室には、広い空に向かって伸びる空間として雲間天井を設けたり、療養室廊下には勾配(こうばい)天井を造り、柱を木々に、方杖梁(ほうづえばり)を枝にアレンジして街路としての外部意識を持たせることにしました。

屋根に突き出した五個のガラスブロックの塔屋は、昼は採光塔としての機能を持ちますが、ライトアップされた塔屋の明かりは夜のしじまに放たれ 「内」と「外」をつなぎ一体感を醸し出してくれるのです。越屋根とも言われる塔屋は、意匠上だけではなく採光・換気・排煙の機能を持ち、日本家屋において も長い歴史を持っていました。
見附市のNさんの場合は家々が軒を連ねている関係から、採光のために塔屋を設置することになりました。場所は家のほぼ中間部分の居間に隣り合わせている 廊下の北側寄りです。大きさはほぼ一坪(3.3平方メートル)、塔屋の南面に設けられた採光窓から入る光は、反射板によって一階と二階の居室に配光してく れるといったものです。採光のためだけだと考えると確かに大仰な仕掛けですが、外と内の空間をつなぐことの大切さを考えると、その機能以上の力を発揮して います。
「塔屋は外と住まいをつなぐ装置」であるばかりでなく、デザイン上もとてもシンボリックなエレメントになってくれているのです。
私たちが生まれつき無意識下に内包している囲いこまれたい欲求と開放されたい欲求とが交差するところが壁面と窓であり、屋根面における天井と塔屋でもあるのです。