NO.57 「リフォーム」・・・・精神的・時代背景を考慮
エッセイ
改修前の外観(右上)、ホワイトチャペルに復活した外観(左上)、
高い講壇(右下)を低くすることで広がり空間にリフォーム(左下)
ニ十一世紀は環境の時代ともいわれています。建築においてもスクラップアンドビルド(壊して建てる)からリフォームのニーズがとても多くなる時代的背景を持っています。
日本基督教団長岡教会は百十二年前に建てられた歴史あるものです。建物はかなりの風化が進んでおり、建て替えか、改装か、と長い間話し合いが持たれてきました。
先人から受け継いできた信仰や精神、会堂などを後の時代にバトンタッチしたいという思いが関係者にはありました。
特に、高齢の方々が新しい会堂で礼拝を守るとき、まるで自分がお客さんになってしまったような、自分の居場所を喪失した感覚にとらわれてしまうことは避 けなければならない。ただし「修復」ではなく、「機能としての会堂」として生まれ変わることも必要と考えました。新築でも修復でもない第三の方法として 「リフォーム」が選び取られました。
ハード面では、建物の外観、内観を改装とは思えない改装をすることになりました。ソフト面では①結婚式が開かれるようなきれいな教会に変身させた い②角地である敷地をできるだけ効果的に表現し、生まれ変わり(復活)を強く意識させたい③ステージ(講壇)を低くし、牧師と会員が同じ目線でいたい(五 十センチの段差から二十センチの高さまで下げること)などの希望がありました。
当時の教会は、説教者と聴衆の間には大きな仕切りがあり、講壇を高く置く形態を取っていました。形はその時代を反映するものであり、歴史は過去のことではなく、今の連続としてとらえる必要もあります。
リフォームは、形のうえで何を残し、何を変えるかはもちろん重要ですが、精神的・時代背景を考慮して変えることの大切さ、変えないことの大切さを見極めることも重要なポイントです。
私のために家族のために、新しい居場所を再構築するリフォームを「リ・フォー・ミー」と呼称してみました。
十月に着工し、きょう二十四日が引き渡し、新しい教会でクリスマス礼拝が行われます。「日ごとに新たになる会堂を見ながらこの選択はまちがっていなかったことを実感しました」とは牧師さんの談です。