NO.59 「窓」・・・・表情決める大きな要素
エッセイ
計画進行中の保育園で構想している
楽しい表情をつくりだす窓(上)、ロフトに設けられた丸、三角、四角などバラエティー豊かな室内窓(下)
新しい年の窓からはどのような景色が見えますか。住まいに限らず建築の表情を決める二大要素は窓と屋根だといわれます。屋根が空を切りフォルムを決める大きな要因であるのに対して、窓は外と内をつなぐ装置であり、外の景色を切り取るフレームの役目もしてくれてます。
窓の機能は建築法規的には採光、排煙、換気がメーンです。ソフト的には外の情報を取り入れ、内の情報を発信する情報交換装置でもあります。窓のデザインで表情が大きく変わるので、設計過程では気が抜けません。
幼き日の楽しみのひとつに紙芝居やさんがありました。駄菓子を売るための商売道具なのですが、独特のはやしてで始まる紙芝居はその続きが見たくて子供た ちの目をくぎ付けにするのです。一枚目の表題が引き抜かれると紙芝居のフレームは子供たちに感動を与える窓として機能していくのです。窓の向こうに開く物 語の世界。見慣れた風景の向こうに刻々と変化する景色をしっかりと焼き付ける役目を持っているのかもしれません。
現在、長岡市で計画中の“ふくちゃん保育所”は窓がテーマです。三歳末満児だけの託児所機能を持つ小さな保育所です。小さな生命をはぐくむ大切な 居場所作りでもあります。お母さんの体内で生命を宿したときの最初の窓はおへそでした。その延長上で考えたとき、決して窓は規格化された、しかも平面的で 薄っぺらであってはいけないという衝動にかられてしまいます。“ふくちゃん保育所”はネーミングのように笑顔です。窓は目であり、鼻であり口でもありま す。その組み合わせが笑顔をつくり、しっかりと外と内をつなぐ機能を持っているのです。
このことは何も外に向かう窓だけでなく、室内窓にとっても言えることです。例えば、共同生活をしなければならない医療福祉施設などでは比較的単調な部屋 がつながりがちです。長岡市にあるT病院の場合は、空調用ロフトにさまざまにアレンジした窓を付けることで、楽しい表情をもった空間が演出できました。
笑う門には福きたる!笑顔が健康をつくると言います。笑相は脳のプラス思考を左右するとも聞きました。個性豊かな窓は、きっと建築の笑相なのかもしれません。窓をあけるとそこに新しい発見が見えてきます。