NO.63 「構造デザイン」・・・・楽しめる空間の活性化
エッセイ
階がコンクリート造り、
2階が木造のハイブリッド構造外観(上)、木造小屋組みを表した内観(左)、シェル工法の新潟市体育館(右下)
自然界には美しい形が多々あります。自然が織り成すデザインは、自然の法則に従い合理的であり、その形を支える構造の美しさは自然との協奏曲の中で生まれてきたのです。
例えば、卵や貝は薄い殻ですが湾曲することで美しく、強度を破格に高めているのです。建築にもこの構造はシェル工法と名づけられ使われています。新潟市体育館はその好実例です。
「新潟県の気候風土には、どの工法が一番良いのでしょうか?」という質問はよくされます。私は「まず住まい方を考えてください。その後に工法が必然的に決まってきます。住まいづくりを工法選びと勘違いしないことです」と答えています。
建築工法は現代ではさまざまあり、工法から入ると住まい方が制約されてしまうこともあるのです。逆に構造をデザインに生かそうとする場合は工法選びから決めていく場合もあります。
日本は世界でも指折りの多雨地域ですので、家を造るには、まず屋根をかけ、雨露を防ぐ必要がありました。そこで生まれたのが、私たちになじみの深 い柱と梁で構成された日本古来からの木軸工法です。最初に柱を立て、梁を架け骨組み構造を完成させ屋根を架けます。この時点でのお祝い「建前」という儀式 は気候風土が生み出した工法に大きく起因していると言ってよいでしょう。
戦後の日本住宅では、柱や梁は裏方で、内部空間を単なる箱づくりにする傾向がありました。そうではなく、木構造自体の持つ流れを素直にデザインすること で空間は活性化するものなのです。梁や柱は裏方ではなく積極的デザインファクターです。木目や木肌、微妙に揺れる年輪は心地よく、人生を語り、人間たちを 包み込む空間材料といってよいでしょう。
事務所併用のEさん宅は1階の事務所部分が鉄筋コンクリート造り、2階の住宅部分は木構造としました。鉄や鉄筋コンクリートそれぞれの素材特性の長所を 組合わせて構造の総合力で対応させるバイブリッド工法は、住まい方のハイブリッドと共鳴して空間を楽しませてくれます。工法はわが家の在り方、住まい方を 考えた後で必然的についてくるものですが、このように住まい造りを構造デザインとしての工法から考えると面白いかもしれません。