高田清太郎ブログ

1/fの揺れと5月の居心地



エッセイ

雪国の5月は、一年中で一番良い季節といって良いかもしれない。
四季折々に豊かな恵みが与えられた日本!勿論、全ての季節は、人夫々に楽しむことが出来ることは
前提であるが。それでも気候が穏やかで暑からず寒からずの5月は、
定温動物の人間にとって最も居心地の良い季節である。
暖房器具の姿が消えて、エアコンが登場するまでのわずかな期間である。
しかもこの期間に梅雨季が横たえていて、長雨の年になれば日本の四季は正に五季に変貌!
雪は雪国人に様々な難儀をかける。
道路の除雪や屋根雪を下ろす労力は決して小さくなく、豪雪にでもなれば、町は孤立化し生活に不便を強いるだけでなく産業にも大打撃を与える。
しかしその大雪が、春になると一変して越後の大穀倉地帯を潤すのである。
雪解け水は日本一の信濃川となり、水稲の育成に無くてはならない存在となってくれるのである。
「昨日の敵は今日の友」ならぬ「冬の豪雪が穀倉地帯の生命の泉」
雪国、越後路の5月は田植えの季節である。耕された田圃が一斉に水鏡と化すのも大変な見ごたえである。
大空が田面に舞い降りるのである。
あぜ道や農道を歩いているとまるで天空を空中散歩をしているような錯覚に陥るといったら言い過ぎであろうか?
画一化された音や形では得ることの出来ない微妙な変化は、人々になんとも安らぎ空間を与えてくれる。微妙に揺れ動く心地よさを「1/fの揺れ」と呼んで見ると私達の周りには非常に沢山存在しているのである。
その代表的なものに木目や畳の目がある。
リプチの森に蒔かれた種が、シロツメクサのじゅうたんとなり、風にゆらゆらと揺れ動く姿を見てクローバーかり〔苦労ばかり〕ではなかったはずである。〔ちょっと無理があるかも?〕
日の出とともに“さえずる小鳥達のおはよう挨拶の連打”や“障子越しに映し出される木々の揺れのシルエット”は正に「1/fの揺れ」である。人々の心を癒してくれるのである。
昔は、ごろ転がしで長い日数を使いながら植えられた水稲の苗。
今は、田植え機で一瞬に植えられる。それでも不思議なのは、手植えも機械植えも植えられた苗たちの並びが微妙に右往左往している。昔も今も変わらぬ“苗”の「1/fの揺れ」合唱団。
朝散歩で癒される1/f風景である。
私達巣舞づくり合唱団は、そんな「1/fの揺れ」の空間を求めて歌い続けています。
そろそろ帰りませんか?居心地の良い居場所へ!

 
「1/fの揺れ」合唱団 田面一夜にして水鏡と化す