酒は器を選び、器もまた酒を選ぶ
エッセイ
“蟹は甲羅に似せて穴を掘る”と言うことわざがある。巣舞づくりにも言えることで、現在の我が家の自分サイズ〔家族構成・予算等〕に合わせて、当初は計画プランニングするのである。しかし、巣舞は家族の成長と共にどんどん変化していくから、何度となくリフォームする必要に迫られる。
“スケルトン&インフィル”世代間を越えて長期住宅に対応するためには、構造と内部設備等は分離されている考えである。間取りを自由に変えることが出来るから長持ち住宅になる。
“大は小を兼ねる”LLスタイルの人はSサイズの服装を着ることができないが、Sスタイルの人はLLサイズの服を着ることができる。勿論着心地は保証できないが。
“帯に短かし、たすきに長し!”どっちつかずの中途半端で役に立たないこと。バイブルに“熱いか冷たいかであれ!ぬるま湯だったら吐き出そう!”と言う言葉があるが、似ているようでもある。
“水は方円の器に随う!”包み込む器の形に自由自在に追随する。入れ物の形に変幻するのであるからその能力は凄いものであり、その柔軟さには感服である。
“酒は器を選び、器もまた酒を選ぶ”日常の巣舞・週末に利用する巣舞・別荘・趣味を生かす巣舞・等と時と場所をわきまえて、住まう人の生きがいを引き出す巣舞づくりがされれば、不景気風も吹っ飛ぶのになーなどと暢気なことを言っているのは私だけだろうか?
割烹「柳屋」さまの第一回イベントにお招きいただき、感動したことしきりであった。
見附市今町で一昨年に設計のお手伝いをさせていただいた割烹柳屋さまは260年という歴史を持つ老舗。
中ノ島―見附今町凧合戦で有名な土地でもある。
タイトルは「久須美酒造冷酒試飲会:酒と食の夕べ:特別企画」演者は感性科学研究所代表の戸塚昭農学博士、会の司会は若女将、お酒の提供は久須美酒造第七代目久須美賢和氏であった。
その会では高校時代の同級生に40年ぶりに会ったり、当社の築縁様に会ったりした上、建物のデザインがとても良いと評価されたものだから、ついついいい気になって飲みすぎてしまった。
出されたお酒は「夏子の酒・清泉・7代目・亀の王・翁・尾」
1.夫々の料理ごとに、一番美味しく頂くために選ばれるお酒が紹介された。食通で無い私にはあまり分からないが、一言添えられると美味しさが変わるから不思議である。
2.酒通の間では「酒は器を選び、器もまた酒を選ぶ」という格言があるらしい。この言葉を知らない私は酒通ではなさそうである。同じ酒でも器を変えると味が変わる。
1上部が広がった朝顔型は手首のスナップだけで飲めるから、日本酒が舌の上を喉に向けて素直に流れ、まろやかな味わいに感じる。
2、 上部がすぼんだワイングラスで試すと顎を上げて飲むと舌の両側に落ちて舌の裏側に多くあたり“えぐ味”と言われる不快な味を強く感じる。瓶詰めされたお酒の上側はまずい酒だという。下ほど美味しいらしい。試飲すると正にその通り。偉い人から順にとか、レディーファーストとか言いながら酒を注ぎ回って、下のほうの美味いところを飲むのが本物の酒通と聞かされて耳寄りな情報ににんまり。注がれる人・注ぐ人の喜びが一致するから一石二鳥でもある。
何でも理がある。その理を理解していくには、格言や諺・コメントが必要であることをあらためて確認した一席であった。
熱が入る久須美専務は七代目 柳屋若女将は9代目の奥様 酒は料理の味を生かす。
戸塚博士と2ショットの 割烹 柳屋 9代目
私は飲みすぎてハイな気分