セシル・バルモンド氏と齋藤先生の対談が建築ノートに掲載される。
エッセイ
アーキニアリング・デザイン展(AND展)の東京凱旋展示会がオープンする。
いよいよ、アーキニアリング・デザイン展が東京に凱旋展示される。2月26日から丸ビル内のマルキューブで展示されるのである。
そのポスターの印刷が進められている。大変盛りだくさんな内容を持ちながら展示場が狭すぎるとそれ自体が持つエネルギーが伝わらなくなる。マルキューブは大吹き抜けの空間の1階ホールと3階ギャラリーを使っての大展示である。その展示会を告知するポスターが印刷される段階に来た。秋山孝先生のデザインと斉藤公男先生のスケッチによる鮮やかなコラボレーションポスターである。最終調整ミーティングである。とても期待しているポスターである。
話が一通り終わったころ齋藤先生からセシル・バルモンドと対談特集が建築ノートに掲載される。編集側も大変なセンセーショナルな記事で売り方を今までと少々様相を変えるというらしい。そちらの販売も同時に丸ビル会場で行われる。
おりしも3月22日まで東京オペラシティアートギャラリーで“「エレメント」構造デザイナー:セシル・バルモンドの世界展”がオープンしているから是非とも見るようにと齋藤先生からコメントがあったので出かけることにした。期待は見事に成就させられた。
会場は以前、建築家:藤森照信氏の展示会でも大変感動したギャラリーである。セシル・バルモンドは斎藤先生と非常に似た建築家・構造デザイナーである。とても異様なバナーの氾濫ゲートから展示は始まる。上手く表現できないので、案内コメントをここに転記することにする。そして、皆様是非とも機会があったら足を運んでいただきたいところである。
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セシル・バルモンドはエンジニアリングの枠を超えて建築家と創造的な協働を行う構造デザイナーです。
構造デザイナーと聞くと、建築家によってデザインされた建築を、力学や施工などの制約をふまえて物理的に成り立たせ、建物に丈夫な骨組みを与えるための技術的なサポートをする縁の下の力持ちとしての役割がイメージされるでしょう。しかしバルモンドの仕事はそこにはとどまりません。「丘の上に空飛ぶ絨毯のように家を飛ばしたい」「運動がみなぎる四角の箱をつくりたい」建築家から寄せられるこのようなリクエストに独自のアプローチで挑み、彼らの実験的な思考を実現に導くバルモンドには世界の建築家から期待と信頼が寄せられている。
スリランカ生まれ育ち、アフリカ、ヨーロッパで化学、数学、建築を学んだバルモンドは、イギリスの総合エンジニアリング会社アラップに加わり、以来、レム・コールハース、伊藤豊雄、アルヴァロ・シザを始めとする世界の名だたる建築家とともに様々なプロジェクトを手がけてきた。バルモンドが生み出す新しい幾何学は、建築を従来の四角、三角、円を基本とした静的で閉じたものから解き放ち、複雑さをはらんだ動的で有機的なものへと飛躍させて現代建築の可能性を大きくひらきました。最新のコンピューター技術と施工技術を駆使しながらも、バルモンドの思考の原点は私達にとって身近なものにあります。太陽を求めて回転しながら成長する植物、枝分かれする葉脈、燃え盛る炎のゆらめき、刻々と変化する陽の光。自然のしくみに注目し、その豊かで美しい秩序を構造に採り入れるバルモンドは、建築に脈動、鼓動を与えて命を吹き込みます。
バルモンドがデザインする構造は、その建築を訪れる人々の奥底に眠る本能を呼び覚まし、感覚と知性を刺激します。自然の形を模倣するのではなく、その根源にある美しさを抽出して広がりを持った幾何学へと展開するバルモンド。展示室をいっぱいに使ったインスタレーションによって、バルモンドがひらく建築の新しい世界を体験していただきます。
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セシル・バルモンドの所属はArup AGUである。AGUは、Arupの内部に設けられた、建築家、エンジニアからなるリサーチに主眼を置いたデザイングループである。
AGUとしてデザインする一方、他の建築家やエンジニア、アーティストとコラボレートしてデザインを行う。幾何学的な形やパターンから自然現象に至るまで、物事の構造的なダイナミックを研究することで、AGUは建築の形やつくり方のまったく新しい考え方を生み出そうとしている。
AGUはセシル・バルモンドによって創設され、彼の抱く形の発生や科学と芸術の重なり合いへの関心によって発展してきた。
音楽や数字、数学は彼の発想の生きた源である。バルモンドの仕事の特徴は、理論を解放的な方法によって視覚化することである。それは美学の新たな科学的探究といってよいだろう。建築とは一見無関係なデザインの源泉へ入り込み、まだ見ぬデザインの可能性を、煎じ詰めることである。厳格な概念としてのストラクチャーこそが建築であるというバルモンドのデザインへの姿勢は、彼を尊重し、共にプロジェクトを行う建築家の想像力を更に引き出す。
バルモンドは言う。「私は、ストラクチャーを空間の句読点だと思っている、まとまりを持たせたり、リズムを付けたり、これこそまさに建築的なのだ。」
バルモンドは、建築に於ける複合性や豊かさを良いと考えている。それはバロック的でもある。「四角いデカルト的な世界は、限定された空間である。私達はその中に住みその空間を使っている。しかし、一方で、私達は、幾何学を他の方法で捉えることを知っている。わたしは形の中に生き生きとした感覚を取り戻したいと思っている。ギリシャのように、哲学的な基礎に支えられた、生きた有機体のように!」
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「エレメント」構造デザイナー:セシル・バルモンドの世界展を見て
とても斬新な設計手法でありながらも、私達誰もが持っているノスタルジーな世界でもある。自然の世界はフラクタクルな繰り返しでもあるから。不思議な感覚でもある。そんな不思議に大変感動した次第である。