高田清太郎ブログ

雪山登山?雪屋根登山!ならぬ恒例屋根雪下ろしツァー



エッセイ

今冬は予想よりも降雪が多くなったようである。
雪を当てにした産業もたくさんあるので一概に言えないが、多くの市民にとっては必要雪量以内の小雪を願う気持ちに変わりはない。
屋根雪が多くなると積雪荷重で建物に大きな負荷が加わることになる。軒先が折れたり、梁がたわんで建具がスムーズに動かなくなったりで生活に支障を起こしかねない。
そこで雪下ろしが行われる。雪下ろしにはタイミングが必要である。問題はその年にどの位の雪が降るか正確に予見できないから、結果として下ろさなくてよかった屋根雪を余り早く下ろしては無駄な労力になるし、遅すぎて前述のような支障を起こしては本末転倒である。
屋根から下ろすだけならまだしも下ろした雪の始末にはそれ以上の時間がかかる。雪国人に大変大きな労力を強いるのである。
現在は道路に消雪設備が施され下ろされた雪も消すことが出来るが、今から50年くらい前はその様な設備が普及していなかったので屋根雪が2~3回下ろされると、下ろされた雪の高さは下屋根よりも上回ってしまうのである。もはや雪下ろしでは無く、雪上げであった。又、当時を振り返ると不思議な現象が起きていた。一般的には屋根雪下ろし作業中に屋根から道路に落下するのであるが、この年は、そうでは無く積まれた雪の道路を歩いている人が屋根に落ちて怪我をしたという漫談もどきであった。
その一つが昭和38年の豪雪であり、私の生涯で忘れることが出来ない出来事でもあった。年末から降り始めた雪が何日も降り止まない。雪と屋根雪の除雪の格闘劇の開幕であった。又、下ろされた雪で道路は完全に麻痺してしまったのである。当時自衛隊に除雪活動が要請された。雁木どおりはすっぽりと埋まり、反対側の雁木に行くには雪トンネルが掘られた。(県立歴史博物館には場所は上越市をセッティングに雪国の風景を再現しているので是非とも一度足を運んでいただきたい。)
冬になると制限されるアウトドアスポーツに代わって(?)雪屋根登山とスタッフの結束力は高まる。普段、机だけに向っている人々にとっては気分転換にはなるが重労働に変わりはない。
しかし、この作業には危険が付きまとう。ニュースで雪降ろし作業中に何人もの人々が落下して尊い命を落としていることを思うと建築屋としては黙っておられない。今冬はもうすでに45名が命を落としておられますから屋根雪と如何に向かい合うかが課題である。建築を生業としている者としての智慧の出しどころでもある。
雪が降ったら下ろせばよい!小雪の時代にはそれで良かったが、毎年その労力を強いるようであればそれだけでは進歩がない。そこで、屋根を落下式にするか、融雪式にするか、はた又耐雪式にするか?対初法様々であるが予算との関係が常に付きまとうことでもある。
そして当社で初めて発表させて頂いた屋根雪耐雪型住宅:ニックネームは“やじろべえ住宅”の誕生である。ここではその誕生秘話や経緯について話させて頂こうと思う。(以前新潟日報に連載させていただいた時のエッセイの一コマを載させて頂きたいと思う)

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NO.19 「雪国の風景②」・・・・荷重を分散させる構造
 
「今年は大雪?」晩秋から始まる雪談議は、冬のあいさつ代わりにもなっています。雪の多少は経済活動にもさまざまに影響してくるだけに予想の的中度は深刻です。毎年の雪による災害、苦労は並大抵ではありません。中でも「雪下ろし」は一大行事です。近年、克雪に対する取り組みはめざましく、屋根雪の処理対策には自然滑落雪型、融雪型、耐雪型、さらにそれらを組み合わせた方法などさまざまに提案されています。
「家を建てると転勤させられる」というジンクスを抱える銀行マンのOさんから、建築のお話を頂いたのは、今から十五年前になります。当時は、屋根雪処理にも今より深刻だったような気がします。「ともかく毎週日曜には帰ってくるので、一週間だけでも雪荷重に耐えられる木造の家を作ってもらいたい」という依頼でした。耐雪型といえば鉄骨造りか鉄筋コンクリート造りと相場が決まっていましたし、木造での実例はゼロに等しかったのです。というのも、雪荷重が建築基準法に重大な影響を及ぼすからです。
そこで、知っているようで知らないのが雪の重さです。雪にもさまざまで、新雪と、ざらめ雪でかなり差があります。多雪地帯の本県では建築の設計をするときに一立方メートル当たり三百キログラムで計算するように指導されていますが、あらためて雪の重さを量ると軽い雪、湿っぽい雪は、平均で三百七十キログラムもあったのです。重い雪だけ量るとなんと六百キログラムをオーバーしていたのです。びっくりもし慌ても致しました。基準荷重で計算しても屋根面積が三十坪 (百平方メートル)で二メートルの積雪荷重は、六十トンもあることになります。なんと元大関の小錦関(二百五十キログラム)が二百四十人も屋根の上に載っていることになります。まさに絶句!そこで試行錯誤、柱のめり込み実験などを経て、5間×5間の正方形プランの木造耐雪住宅が完成したのです。十六本の五寸角通し柱をグリッド状に配置し、屋根雪荷重を均等に分散させ、二メートルの積雪に耐える構造です。非常時に備え、梁(はり)には重量を感知するセンサーを設置。また、ちょうどおけに、たがをかけたようにはりを四隅から登りばり形式にし、地震にも対応できるように計画されています。バランスの良い建築構造から「やじろべえ住宅」とネーミングすることにしたのです。
月夜の晩、ぽってりつもった屋根の雪がシルエットに描き出されたとき、長く寒い雪国の風景が妙に温かでもあるのです。やじろべえ住宅は、耐雪工法という構造的ハードをカバーするのみならず、雪国の情緒ある風景づくりにも一役買っている建築工法でもあります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・新潟日報掲載記事より!
・・・又、弊社のやじろべえ住宅へもリンクしてみて下さい

さてさて、屋根雪登山隊が雪下ろししている今冬の雪の重さはどの位あるのであろうか?相手を知る事は百戦錬磨への入り口!サンプルは事務所エントランス部分の傾斜屋根。
サンプルは250mmX250mmX500mm(H)を計って32倍して1㎥換算をする。新雪なら、100kgもないのであるが、計測すると300kgを楽に超えてしまっていた。今回も350kgであった。重い雪である。
建築基準法では表示義務のある建築物の場合に限って、積雪深の表示を義務付けているが、実際には積雪荷重であることをお忘れなく。

   弊社事務所北側正面玄関         南側風景                     隣棟から

  
   雪下ろし完成後:登頂記念写真      雪の重さを計るサンプル