かかし(案山子)&ととし(案田子)
エッセイ
稲の刈り入れも終盤にかかった。肌寒い空気は爽やかで美味しい。朝の散歩途上で数えた米粒数が例年より多いのに気を良くしていた私にとってショックの報告であった。Nさんの田圃からの報告である。今年は豊作だと思いきや、最初に刈った田圃からの収穫は1反当たり30kg少ないと言う。一俵は60kgであるから30kgは半俵と言う勘定になる。
また一般的には一反(300坪=1000㎡=10アール)からは10俵以上は採れないから半俵の減は5%以上の減と言うことになる。何だ5%か?と言われるかもしれないが、これは大きな数字であることに間違いない。経済成長率が+-ゼロから1~2%でガタガタ言っている。5%の数字は大きい。
試験成績の場合でも100点と95点の差は大きいが50点と55点の差はそう大きくは感じない。
そう!5%は心情的にも大きいが質量的にも大きいのである。不似合いな例えではあるが、80kg級の体重の人は4kgの変動である。この減量にはかなりの努力が必要である。(私ごとで気になることであるが、田圃の収穫にはちょっと関係ないパラメーターを持ってきてしまった。反省!)
今年も摂田屋の田圃の中(勝手にセッタヤードと呼んでいる?)に出現した一本足打法の案山子にはとても心温まるものが迫ってくる。
案山子と祈り七夕短冊が田圃の中に出現した。妻有のトリエンナーレ展ならぬセツタヤード展である。
ご近所の人の話では上組小学校5年生の作品だと言う。先週は6年生がまちかど美術館活動の一つとして「マイタワー」を作ることに挑戦している。形化して10月の8日(土)の摂田屋おっここ市には宮内商店街でお披露目準備中である。
上組小学校のアート活動は他の学校からぬきんでている教育活動の一つである。
教育はその土壌が大切である。
ここで少々PRタイム:池上秀敏著「遊びにおいでよ、美術館へ」ブイツーソリューション
長岡市立上組小学校は美術活動に大変造詣の深い学校である。
歴代の校長は美術関係の方が殆どである。現在の校長は池上秀敏先生である。先生は2年ほど前に校長として赴任されている。それ以前は長岡市にある新潟県立近代美術館学芸課長代理を二年ほど歴任されていた。先生は付属小学校勤務やアブダビ日本人学校の教員も経験されている。異色と言えば異色な方である。池上先生とは秋山孝ポスター美術館長岡でも学校ごとのお交わりを頂いている。
先生が書かれた著書タイトル「遊びにおいでよ、美術館へ」は美術館を肩ひじ張るものとしてではなく、裏側から美術館の生の姿をお伝えしている書物である。
是非ともお読みいただきたいご推薦の書である。
閑話休題:
稲穂の周りには小さな生き物が沢山生息している。中でも蜘蛛君たちの曲芸は今年も散歩人を楽しませてくれる。罠に引っかかる昆虫たちにとっては恐怖の仕掛けでもあるが。
反対にお米を狙うのは様々な鳥たちである。農家の方々は鳥たちを追い払うのに仕掛けた鉄砲音で追い散らしたりするのであるが、それもやがて慣れてきて一向に逃げようとはしない。
視覚的にきらきら光るアルミ紐を縦横に張ることで威嚇する方法もある。
鳥たちを防御するために一番原始的な方法の一つがやはり何と言っても案山子戦略である。
ウキペディアによれば:古典的には、案山子は竹や藁で造形した人形であることが通例であった。これは機能の面から言えば、鳥獣に対して「人間がいる」ように見せかけることを目的としている。人間が農作業をおこなっているときには鳥獣は近づかないからである。
現代においては巨大な目玉を模した風船なども用いられる。これは、大きな目を恐れるという動物の本能を利用したものである。
そこで思い出すことがある。日本建築学会で主催していた親と子の建築講座の講師を10年ほど前に二回ほどさせて頂いたことである。
テーマは「デザインと構造」である。案山子と蜘蛛の巣と火の見櫓の鉄塔を用いながら、私たちの身の回りにはたくさんの構造デザインがあることに気が付いてもらうことから始まる。構造とデザインは別なものではなく一体のものであることを確認して頂き構築物の楽しみを語らしていただいた。
構造とデザインのモデル 語りかける片持ち梁工法[「桜観荘」
事例を沢山ご紹介しながら構造デザインの感覚を磨いてもらう。その後、親子が一組になって様々な材料を選び、道具を駆使して自分たちの形を作り出すのである。
構造には必ず力の流れがある。安定した力の流れの場合は大丈夫であるが、不安定な力のかかり方をすればすぐに倒壊するのである。
作業は頭に浮かんだ形をどのような力の流れで安定させるかが問われるものである。
そこで使った模型には、一般スケルトン(柱+梁)工法からテンション(吊り)工法!更に膜工法・シェル(貝)工法まで様々である。機能とデザインから選択される工法は適材適所に用いられなければならない。
特に案山子(かかし)は目を引く。一本足で立つからである。キャンチレバー工法(片持梁工法)という。地面からニョキッと立ち上がる。二本で立つ姿は安定であるが、一本足ではちょっと不安定である。不安定感は語りかける力が強いのである。
片持梁工法は梁が重力に対抗してせり出してくるのであるから、必然的に人々に語りかける力が大きい。デザインに使われる。
片足で立つ人の姿にして“へのへのもへじ”と描けば顔が現われる。
案山子(かかし)は欧米ではお化け!幽霊のひとつに数えられているから日本の様に単純にはマスコット的な気分に扱えない。
何故案山子と書くのだろう。山を案内する子供?標識の一つだったのだろうか?
中国故事に大山に対する小山:平らな部分を案山と言うらしい。
またまた勝手な妄想が始まる。新しい漢字が付け足される?
一般的に合言葉は「山」に対して「川」である。この際、「山」と「田」にする。かかし(案山子)は山である。田圃は案田子:カカ様に対するトト様である。
案山子(かかし)と案田子(ととし)とすることにする。かかさま(母)&ととさま(父)は今日も稲穂を守っている。
覗いてみてください。案山子たちの秋を!ふーっと息がとけますよ!
橋げたと野草にかかる蜘蛛仕掛け! 一日中ぶら下がって獲物を待つ。蜘蛛たちの曲芸は続く!
じっとただひたすら待つ根気もの!
セッタヤード展は散歩人を楽しませる。 人が稲刈りをしているように見える。
さまざまな願いが書かれた短冊 なんといっても豊作祈願文が多い! 田んぼと協奏曲を奏でる
一生懸命にイネ刈っている姿に見えるでしょう! はい私ですよ! じっと腕を広げているのも疲れるものです!
サー鳥たちよおいで! 蜘蛛さんたちと同じく:じーっとして!忍の一字!