高田清太郎ブログ

寛容と許容



エッセイ

すまいは巣舞
巣は形・舞は想い
想いを形に
巣舞るフォー・ユー
高田建築事務所

*    年が変わると様々な行事が始まる。
・    年初の定例はなんと言っても年頭会と年始会(新年会)である。
・    一週間を置かずに行われるこの定例の年頭会・年始会は、今年の方針を社内・協力業者さんに対する年初抱負を所信表明という形で始める。そしてどの会も二部構成である。
・    年頭会は社内会議である。一部は社長である私から始まり全スタッフが一年の抱負を語る発表会である。会議時間も5時間を越える会である。(熱気ムンムン?)
・    年始会は、長岡、新潟それぞれの協力業社さんとの会である。一部はどちらもほぼ3時間の会である。そしてどの会も二部には宴席が設けられている。
・    協力業者さんとの顔合わせ会(年始会)では、お酒を注ぎながら一人ひとりにご挨拶に廻りに行くと一部の会の時とは違った様々な風景が見えてくる。
・   二部の席で、” これから大切なのは会社(社長.)の度量だ!”という話を持ちかけられた人が居られた。会社の器量・容量とも表現された。
・    社員と経営者側が一体となって進むべき道は重要であると。
・    ・・・・
・    ふっと思った。容量は容の能力である。その上を「寛容と許容」の2つの言葉が過ぎった。

*    何時になく考えさせられる対の言葉でもある。所謂:私にとって気になる言葉である。
・    「寛容」と「許容」なる言葉である。
・    一見とても似ているのであるがあまりつめて考えたことがない。
・    両者に使われている漢字に「容」がある。
・    グーグル辞書に寄れば
1 中に入れる。「容器・容疑・容量/受容・収容・包容」
2 入れた中身。「内容」
3 かたち。姿。「容姿・容色・容貌/偉容・艶容・音容・玉容・形容・山容・陣容・哀容・全容・美容・理容」
4 聞き入れる。受け入れる。ゆるす。「容赦・容認/海容・寛容・許容・聴容・認容」
5 ゆとりがある。「従容」
6 たやすい。「容易」
・    とジャンル分けされている。寛容も許容もジャンル4に該当する。
・    対に使われる漢字によってさまざまに変容もする。
・    そして変容なる言葉自体にも「容」が使われている。
・    容は中々の優れものの漢字である。

*    それでも不器用に差異をチェックする。
・    私にとって直感的に、限度がないのが「寛容」であり、常に限度を意識させるのが「許容」である。

・    「許容」
・    「仏の顔も三度まで!」という故事がある。意味はどんな温厚な人でも、何度も無礼なことをすれば怒り出すことの喩えである。つまり限度があるのである。この場合は許容の範疇にある。
・    「許容応力度」:建築を生業としている私にとって、許容は力と重なって許容応力度が身近にある。
・    この数値を超えると構造物に問題が出始める。或いはこの範囲なら問題なし!と言っているので分かりやすい。(機械や構造物の材料に衝撃・変形が加えられても、破壊せず安全に使用できる範囲内にある応力の限界値をいう)

・    「寛容」
・    一方、寛容はとても大きく捉えるのに難しそうである。
・    キリスト教会式の結婚式で語られるメッセージの定番がある。
・    バイブルの中にパウロが宛てたコリント人への手紙の中である。
・    日本語訳では:愛は寛容である。愛は親切です。愛は妬まない。・・・とつづく。
・    ここに「愛は寛容である!」と書かれているのである。
・    英語版では:「Love is patient!」である。patientは辛抱強い。耐える、忍耐と直訳される。つまりダイレクトに訳すと「愛は忍耐である」になるのだ。寛容を忍耐と訳しているのである。
・    そうか、愛は忍耐だ!言い方を変えれば、忍耐のある方は愛のある方なのでもある。

*    広辞苑によれば「寛容」とは?
・    寛容(かんよう、英: toleration)とは自分と異なる意見・宗教を持っていたり、異なる民族の人々に対して一定の理解を示し、許容する態度である。
・    寛大で、よく人をゆるし受けいれること。咎めだてしないこと。「―の精神」「―な態度をとる」
・    他人の罪過をきびしく責めないというキリスト教の重要な徳目。
・    異端的な少数意見発表の自由を認め、そうした意見の人を差別待遇しないこと
・    ・・・宗教・思想上の議論が始まるとお互いに私だけが信じている宗教・思想だけが正しい!となり相手の信仰を否定してしまいがちになる。そんな時に許容精神とは言わずに「寛容精神」が必要とされるのである。

*    寛容と許容の使われ方には微妙な差異がある。
・    …もう一度一文字ごとの意味を辞書で調べると、
・ 「 寛」:他に対して態度がゆるやかである・こと(さま)
・ 「 許」:ゆるす。おおよその量。ばかり。
・ 「容」:かたち。すがた。
・    ・・・・そして組み合わさると、
・    寛容:心が広く、他人をきびしくとがめだてしないこと。よく人を受け入れる・こと(さま)。
・    許容:その程度ならよしとして,許して受け入れるここと。

*    使い方としては「力」の入れ方である。
・    許容力のある人だというが許容の人だとはあまり言わない。
・    寛容な人だとは言うが寛容力のある人だとはあまり言わない。

*    新潟県は雪国である。許容力の一例:
・    今冬の積雪はどのくらいになるだろうか?雪国人であれば誰でも気になる話題である。
・    Oさんから木造で耐雪住宅をつくる依頼を頂いたのは今から30年近く前になるだろうか?
・    聞けば2m~2.5mくらい積もっても、直ぐに雪下ろしを急ぐ必要のない大丈夫な木構造住宅だというのであった。
・    一般的には積雪量を依頼されるのは間違いないのであるが建築者側からすると積雪深ではなく、積雪荷重であることをお伝えするフォーマット作業の手は抜けない。
・    要求雪荷重に耐える木構造にするのであるから構造計画に従った部材を使用しなければならない。
・    木材の樹種によって強度が違うのは納得していただけるだろう。
・    引張り強度・圧縮強度・曲げ強度と樹種によって違うのだ。そしてそれらのデータはそれなりにあったが、めり込み強度のデータが中々見つからなかった。
・    雪荷重は季節荷重である。長期強度に対する短期強度といわれるものである。しかし、2~3ヶ月も屋根上に荷重を載っけておく事になると、親方の一時馬鹿力は続かない。疲労を起こすことになる。時間と共にめり込み度が多くなるのである。めり込みやたわみが多くなると室内建具が動きにくくなる。精神的にも物理的にも快適な生活の支障をきたすことになるのだ。
・    正確なめり込み量データを知りたくて、いくつかの大学を廻った。新潟大学・日本大学・東京大学と木質構造のデータを求めたが当時は明確な回答を頂くいことができなかった。
・    そこで、地元の長岡技術科学大学の機械科のM研究室のM教授をご紹介していただき樹種ごとの実験をすることにしてデータを得ることが出来た。
・    なんでも念には念を入れないと納得行かない当時の私のエピソードでもあるが。
・    発表されて工法は「やじろべえ工法」と命名された。決して動いていうるやじろべえのイメージではなくとてもバランスの良い安定性のある工法であるからだ。
・    許容応力度はとても大切な数字である。これを元に構造計算がなされたからである。
・    許容はデジタルな感覚な数字でもあるが。
・    同じ容という時と熟語になる文字に寛容はアナログ的でもあり、ほのぼのと感じるのは私だけではあるまい。

・ 許容力も寛容力も自分から生まれるのではなく丁度一杯に注がれたコップの水がこぼれる状況を言うのだろう。元々水の入れられていないコップからはこぼれることはないのであるから。

  

寛容          +          許容         =      二容