NO.30 「デザインソース 1」・・・・「高田の風土」醸し出す
エッセイ
今年も全国各地から桜の開花情報が届きました。開花便りは日本列島を映し出すに格好の情景です。4千本とも数えられる高田公園の桜は大変見ごたえがあり、日本三大夜桜のひとつともいい、通り行く人たちの心を慰めてくれる居場所です。
そんな公園の近くに八十年以上の歴史を持つ日本基督教団の高田教会があります。歴史的にも価値があり、保存か改築かで長年揺れ動いたこともうなずけること です。改築が決まり、その土地の持つ特徴を整理してみると「春の桜」と「初夏の睡蓮」そして雪深い町・高田の情景「冬に活躍する雁木」。デザインモチーフ として採用するのに不足はありませんでした。
中でも高田公園の睡蓮は、初めて訪れた人たちに感動を与えてやみません。なんとか、睡蓮から生まれるアイデアを採用できないかと検討を重ねてきました。そして「はすの葉チャーチ」とネーミングされたときから、ひとりでにデザインも構造も決まってきました。
まず、外観のデザインを考える上で、教会のシンボルとして三つの塔を建て、屋根は三位一体説を堀に浮く蓮の葉のように配置しました。それぞれの塔は礼 拝室、牧師室、母子室です。礼拝堂は比較的大きな空間ですので、屋根雪に耐えるために張弦梁(ちょうげんばり)工法を採用しました。それは耐力上だけの対 応から選んだ工法ではなく、蓮の葉の「葉脈」をデザインに加えたいからでもありました。
木と鉄のハイブリッド工法を採用した「構造即デザイン」は結果的にも力の流れをごく自然に表現したものにもなりました。
内装は木と漆喰(しっくい)調の白色でコントラストを生かし、照明器具も水面に浮かぶ睡蓮のイメージで選んでみました。
はすの葉というと別の宗教をイメージしがちですが、日本基督教団・高田教会は風土性のエネルギーによって、そのことをさえ受け入れる寛容な建築といったと ころでしょうか。もちろん、アプローチ部分には高田の雁木風景を忘れないで配置してあります。風土が醸し出すものをデザインソースとして素直に受け入れる のも一つの手法です。
「風景を見ている自分が、実は風景の一部である」と知ったとき、肩の荷がおりて自然と同化できるのかもしれません。