NO.33 「風呂敷住宅1」・・・・自由自在に空間づくり
エッセイ
「水は方円に従う」と申します。空間づくりをする時になぞらえると、自由自在に器に合わせてさまざまな形になる事が出来るわけですから、臨機応変でもあり同時に天真爛漫な空間をイメージすることが出来ます。
新築してから、五年、十年、十五年と節目ごとに改装をしているお宅や、家族構成の変化に応じてリフォームする住宅もありますが、一日の時間内での家族構成の違いをうまく組み合わせて使用することができる空間は、とても魅力的です。
そのためには「可動」の仕組みを作ることが大切です。一番シンプルな仕掛けは建具による可動です。一直線に部屋を並べて、必要に応じて建具を閉めて小さな空間にしたり、反対に全開放にして大きな空間にすることができます。
包むものによって自由自在に変えることのできる空間なので、これを「風呂敷空間」と呼ぶことにしました。今回は「さやの間」を手法に使った例をご紹介します。
長岡市のMさんは、おばあちゃんと、若夫婦そして子供二人の二世帯住宅。一階の母親室と共用空間をワンルーム風に造って可動間仕切り(建具)で開閉でき るようにしました。居間から母親室までを組み合わせるとワンルームから四室まで構成できるようになっています。朝から夕方、皆が帰ってくるまでは、建具を 全開放しておばあちゃん一人で広い空間を楽しめます。仕切られているときと比べると風通しも採光もとても良くなります。
しかしこのことは同時に問題を含むことになります。母親室がリビングとつながるため、音の問題や精神的に建具一枚では、夜には落ち着かない空間になってし まいます。そこで一間幅で二間長さの両端にふすまを立てて、広さ四畳のさやの間を取ることにしました。就寝時は両方にふすまを閉じることで、おばあちゃん のプライバシーを確保できます。また、一方のふすまだけを閉じれば、この四畳は母親室空間になったり、リビングにつながったりし広がりが取れることになり ます。
住宅への要求空間は時間とともに変化します。風呂敷住宅は家族構成のライフサイクルにぴったりと追随してくれるアイデアでもあります。