NO.34 「風呂敷住宅2」・・・・パズル式に魅力的空間
エッセイ
風呂敷住宅の二回目は五年前に東京から長岡ニュータウンに移り住まれたKさんのお話です。
建物中央に四畳半の和室を置いて、四辺に箱を広げたようなプランニングです。東側に居間、南側に食堂、西側には玄関と階段ホール、そして北側には書斎兼景観コーナーをゾーニングしたものです。
このコーナーは長岡で生活しながら東京の仕事をするSOHO空間として計画が始まりました。
それぞれに面する間仕切りを開けたり閉めたりすることで、居間+和室、食堂+和室、景観室+和室など、必要に応じてさまざまな間取りを作り出すことがで きます。和室の間仕切りをすべて閉めても、ぐるりと回ることができる動線が確保されているため、とても使いやすい平面計画となっています。
ところで、四畳半の和室は平面的に中心になっているだけでなく、吹き抜けを設け、立体的にも建物の中心になっています。吹き抜けに設置した垂直の障子戸 を開放すれば家中に風と光を行き渡らせることができます。また上下階のつながりも生まれ、一階のどこにいても二階とコミュニケーションをとることができま す。冬季間は熱効率のために障子戸を閉めても光は確保できます。
このように平面的にも、立体的にも必要に応じて伸縮自在の空間が出来上がったのです。ポイントは中心の四畳半。中心にいながらどっしりとした空間でもあ ります。ごろり横になれば四周見渡すことができる住宅の土俵空間といったところです。国営公園に隣接して景観は四季折々に絶景です。外のデッキにまで広 がっていく空間を思いきり開放させることによって、旬の新鮮な空気を心身共に享受することもできるのです。
その日の気分や使い分けで幾通りにも組み合わせできるパズル式「風呂敷空間」は、和文化独特の自在性を生かした魅力的な空間構成といえます。
「風呂敷」に相対する言葉に「重箱」があります。入れ物の中身の大小に限らず一定の固定・収納空間です。それに比べると変幻自在な風呂敷空間の面白みと楽しみは格別です。