NO.37 「個室の是非②」・・・・キーワード変化と成長
エッセイ
長い間、子供に個室は必要か否かについての議論が交わされてきました。 必要論者は「成長する子供の『自立心』を高めるために絶対に必要!」。反対に不要論者は「協調性・共感センスを高める上で、共同生活スタイルは重要!」-それぞれに説得理由があります。
当事者である子供の立場から、実際に個室を要求する時期はいつか?一般的に、小学校の高学年から中学校にかけてです。親の側から見てみると、新築すると きには最初から子供室を取っておく方。また、子供が欲しがるまでは大きな遊び空間として他の部屋と接続して取っておき、時期が来たら仕切る。やがて巣立っ たら再び仕切りを開放する方などさまざまです。同じ面積でも単に個室として分けるのではなく、子供たちだけの共用スペースを取ることも提案のひとつです。
Aさんと子育て談議に花を咲かせたことがありました。親は子供をいつまでも近くに置きたい。しかし、子供はいつか独り立ちしていく。子供の成長の 節目の一つに反抗期があります。接近しすぎる親に対して、間合いを取り自分の居場所を確保するものであり、ちょうど接触事故をおこす車に対してクラクショ ンを鳴らすことに似ているといわれています。子供室を考える上で大切なサジェスチョンです。それでも、スキンシップを大切にする空間を作りたい。という希 望はAさんに限らず世の親たちからの無言の要求でもあります。
Aさんへの提案は、玄関を出入りする子供は必ずリビングかキッチンを通らなければ子供室に行けない配置になっています。(後に関所の家というネーミング が付きましたが!)しかし、キーワードは「変化と成長」です。第一段階で、幼き日、兄弟が遊んだ大きな空間は、やがて薄い壁で仕切られ、子供たちだけの空 間として家族から分離される。
次に子供間にも壁で仕切りがつけられ、個空間の誕生です。子供室と名前がつけられた固定的な仕切り方でなく、成長とともに段階的に流れる空間としての.子供室の提案です。
子供の個室への道は結構険しいものであるのかもしれません。そして、今日も新しい概念を持った子供空間へと進化していることでしょう。