高田清太郎ブログ

NO.60 「傘と家」・・・・自由な感性で躍動感も



エッセイ

傘のコンセプトスケッチ(左上)、傘の家(左下)、カーサ・ミラの屋上(右上)、サグラダ・ファミリア教会(右下)

 

 

「傘と家」この2つの漢字を見ると不思議な連想をして しまいます。家という字のなりたちは屋根(ウ冠)の下で豚をかう所という意味だそうです。イギリスの童話「3びきのこぶた」のお話は、今風に言えば3匹の 子豚が建築コンペに参加したようなものと考えてみるのもおもしろいです。
わら造り、木造、レンガ造りと建築工法は三者三様。建築コンペの条件は狼対策に一番強い家、審査基準は頑丈である。それにしてもだれもがレンガ造りに軍 配を上げるのに反対しないのも不思議です。もし、気候風土に合った建築という条件が加われば、日本のように高温多湿地帯では木造、もっと南に行けばわらづ くりの家に軍配が上がるのかもしれません。
もう一方の「傘」という漢字ですが、屋根の冠がつくのは同じですが、その下に人が4人重なっています。相合い傘ということもできますが、漢字のまま2階 建てに住む家族と考えるとなぜかうなずける。そして家ではなく傘の家を作ってみたいと思ったのが今から15年ほど前になります。

Aさんが買い求めた敷地は三島三島町です。傘にも「雨傘」「日傘」といろいろな種類がありますが、傘の家とネーミングしたコンセプトは雪との問題 を一番に考えたものでもあります。傘をすぼめたときをイメージした急勾配の屋根。建築基準法でも勾配屋根は積雪量を軽減できます。雪が屋根にたまる前に風 などで吹き飛ばされるからでもあります。
内部は木組みをそのままいかしたストラクチュラルデザインが特徴。既成の概念にとらわれない躍動感あふれる自由な感性で表現されています。
建築家ガウディの代表作は、サグラダ・ファミリア教会ですが、その近くにあるカーサ・ミラ(集合住宅)もガウディの作品です。屋上の排気、換気塔には独特の造形が施されています。カーサはスペイン語では家。傘の家はカーサの家と語呂が重なってとても愉快でもあります。
ものづくりたちの使命は、無から有を生み出すことだといいます。空間の昇華はいかにゆたかな言葉をもっているかに帰依します。イメージをどういう形に表現するかが大きなテーマです。ことば、それは創造そのものなのです。そしてゆたかな創造の母体でもあるのです。