高田清太郎ブログ

あしたも桜色!



エッセイ

すまいは巣舞
巣は形・舞は想い
想いを形に
巣舞るフォー・ユー
高田建築事務所

*  介護は楽しく、生きがいでした。山上洋子著「あしたも桜色!」母親を自宅で介護してきた著者がつづる16年間の心の記録“アルツハイマーの母と紡いだ日々!
*    山上洋子さんがお母さんを介護された苦闘(生きがい)の16年間の体験を新潟日報事業社から上梓された。
・    タイトルは「あしたも桜色」である。
・    前々から夏までには本を書かなければならないと使命感を持って取り組んでおられたことはお会いするたびにお聞きしていた。それだけに完成したとの報告を頂いた時には我がことのようにうれしかった。物書きでない私も書籍を出版する時の生みの苦しみを少々経験したことがあるだけに。
・    そして8月19日にわざわざ届けてくださった。私は手にした途端にずしりと重いものを感じざるを得なかった。そして、”お疲れ様でした“と心の中で思い言葉でお伝えした。
・    16年間と言うとても長期間のお母さんの介護後に本を書く使命感は並々なものではない。ただただ、敬意を表するものである。
・    “はじめに”の書き出しに“母がアルツハイマーと診断されたのが平成9年のことでした。私はアルツハイマーの母を施設にお願いするのではなくて、自宅で介護する方法を選びました。介護と言うと、「大変」とか「疲れる」とか悪いイメージにとられがちですが、私は母の介護をしながらむしろ幸せを感じていました。”と書かれていた。
・    前文にこの本の全ての主旨が語られておるようだ。
・    “会社創業と重なり、仕事と介護の両立は大変と思われる方も多いと思いますが、私の場合は介護があったからこそ仕事も頑張れた。「母と過ごせて楽しい」”
・    そして上梓する直接の原動力は“もしかしたら私の介護体験は、いま介護に直面している人や将来介護をするかもしれない人たちへの励ましや参考になるかもしれないと思うようになりました”また、“母と紡いだ日々を思い出として残したかったからです。そして介護が楽しかったことを多くの人に伝えたいと思ったのです。苦しかったこと、楽しかったこと、学んだことなど、私の介護体験が介護に直面している方々へ少しでも役立てばと本書をしたためました”
・    お母さんへのこぼれんばかりの愛が沢山ちりばめられております。のみならず、介護経験をする人、している人への応援歌としての愛情も沢山盛り込められています。
・    是非とも皆様に一読をお勧めしたい書籍である。

*    著者の山上洋子さんと弊社の関係は完成現場のクリーニングを依頼している会社「(株)ホーミング」の社長さんでもある。
・    何時お会いしても静かな空気の中に情熱を醸し出されているとても素晴らしいお方である。
・    だからこそ素晴らしい書籍の上梓が出来たのである。

*    山上洋子さんは書いておられた:
・     “今思うに、私が自宅での介護を乗り切ることが出来たポイントは五点あったと思います”
①    公的介護サービスをフルに利用出来たこと。
②    信頼できる医師や看護師、ヘルパーさんに支えられたこと。
③    父や妹たち、親戚に温かく見守ってもらったこと。
④    色々な人が出入りするオープンな家にしたこと。
⑤    私がくよくよせずに、介護そのものを楽しむことが出来たこと。

・    “介護には、家族の中心となって世話をするキーパーソンが必要であると言われている。そしてそのキーパーソンの決定に従うようにすればうまくいく”
・    “仕事があるから在宅介護は無理、と考えている人が多いと聞いていますが、私はむしろ仕事を持っていたからこそ、介護だけに専念する人よりも、気持ちに余裕を持って介護できたのではないかと思っている。介護モードと仕事モードを上手く切り替えることでどちらもがんばれたような気がする”と!

*    介護を乗り切るためのポイント④に「オープンな家にすること!」とあった。
・    弊社が山上さんから依頼された巣舞づくりは、まさに介護住宅であった。そして結果は正に快護住宅と!
・    巣舞づくりは一般的には普通の巣舞づくりをしておいて将来に必要とされる介護対応を可能にしておく造りをすることが多い。言ってみればバリアフリー感覚を取り入れておくケースが多いのである。
・    山上さんの場合には介護の真只中!建て替えながらの介護は不可能であった。新しい土地を準備してのゼロからの介護住宅の建築であった。
・    介護のし易さ、し難さが如何に巣舞づくりによって影響されているかを正に目の当たりにされたのである。
・    本の中にも書かれていたが弊社に建築を依頼された時の要望は五点であった。
①    お母さんの部屋と自分の部屋、キッチン、リビングダイニングのどの部屋にいても、お母さんの様子が見えるような部屋の配置にしてほしい!
②    外から容易に車椅子が出入りできるように、玄関アプローチのスロープを長めに!
③    バリアフリー、戸は全て引き戸にして下さい!
④    車椅子がぶつからない様に、家具を置かずに収納棚を作りつけにして下さい。
⑤    介護がしやすいように、一つ一つの部屋のサイズを大きくして下さい。
・    以上の様に問題解決に対していつもぶれない明晰さは巣舞づくりでも発揮されたのであった。

*    少子高齢化がもたらす影響はとても大きいように思える。
・    平成24年10月の統計では一年で28万4千人ほど日本人人口が減っていると言う。
・    このままでは2300年には日本人はゼロになるとか?
・    その前に人口全体の中で占める高齢者率は破格である。65歳以上がはじめて3000万人を超えたという。全人口が1億2595万人であるから23%強である。
・    介護保険も破綻しそうである。消費増税に介護保険料の上乗せも避けられない凄まじさである。
・    もはやこれからの住宅は新築もリフォームも増減築も介護を前提とした仕様が求められること間違いないことである。


装画は田中守画伯

内容はとても重いものであるがとても読みやすくもある。