43年前の奥入瀬の清水がそのままそこに流れ続けていた。
エッセイ
すまいは巣舞
巣は形・舞は想い
想いを形に
巣舞るフォー・ユー
高田建築事務所
新潟―山形―秋田―青森縦断3日間
* 43年目の再会:
・ それは大学3年生の夏休みの時である。今から43年前の話である。
・ 北海道一周30日自転車一人旅!の出発である。
・ せっせとアルバイト(早起きしてデパートで清掃したり、夕方には有楽町の山手線下の食堂で閉店まで皿洗い兼ウェーターとして)貯めた資金で自転車を買った。テントも購入した。
・ 残ったお金が1万5千円:これが全財産だった。30日の工程を割り返すと一日500円で全てを賄わなければならない。一日三食で500円!ほかには使えない。
・ しかし、不思議と心細くはなかった。基本的には、きっと私は楽観者なのであろう。夏だからテントで野宿で十分。海岸沿いにテント張れば海水浴場シャワーが使えると胸算用!
・ どうにかなるさ!と言い聞かせて出発する。結論から無事に30日間の北海道物語の完!であった。
・ 当時、アルバイトしながらも出かけるまでには沢山の準備が必要だった。心の中にはかなりの逡巡があったことも否めなかった。あれもこれも準備しなければならない。と考えただけで気が重くなり中断したくなるのは人情。
・ そんな迷う私に言葉がやってきた。「最大の準備は出発することだ!」と決め込むと意外に自転車のペダルは軽くなった。
・ 一日目は瀬波温泉海岸である。長岡から当時の道路では距離にして120kmであった。
・ 気負って出発したのに、何でこんなことをしているのだろうと?一日目の昼には自転車こぎながら早くもギブアップ気味である。それもそのはず大変な炎天下であったからでもある。一日目にして短パンから出ている脚の肌はやけどのように真っ赤だ。
・ 楽観者である私は、いつでも帰ればいい。ギブアップは簡単だ!と気軽に考えると、本当に気が楽になるのである。
・ 「せねばならない!」と言ったマストの世界では出会うことの出来ない、まさに「いい加減」のバランスが30日の北海道一周自転車工程を完走することを可能にしてくれた。
・ 一面、心配性! 気負わない。しかし、今日一日にしなければならないことをしっかりとやることの大切さをそのとき経験したのであった。
・ まさに、「明日のことを思い煩うな、明日のことは明日自身が思い煩うであろう!」であった。
・ 3日目は八幡平の急坂をジグザグに時間とエネルギーをかけて上ると、眼下に十和田湖である。素晴らしい眺めである。一瞬にして難儀な道のりの負債が解消されたことを想い出す。
・ テントを張って、夕食ととるとすぐに眠れる。ともかく一日中自転車こぎで疲れているのだ。
・ そして、翌朝は十和田湖畔でゆったりと時間を過ごす。いよいよ4日目は奥入瀬渓流である。
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・散策道である。
・ 坂道に任せたままで、ゆったりと自転車を走らせる。
・ 木々の間からこぼれ落ちる陽光はまさに1/fのゆらぎ・癒しの空間!鳥たちのさえずり!せせらぎの音は43年たっても決して忘れることのなく身に沁みついているのである。
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この自転車旅行では、カメラを持たないというテーマを実行中であった。カメラを通してみたものは決して心深くに残らない!と勝手に決め込んでいたのである。カメラの力を知りながらも(一方でカメラを買うお金がなかったことも条件に合ったことはあったのだが?)
・ 至福の時間と空間を奥入瀬渓流で与えられた私には迷いはなかった。北海道一周旅行を無事に終えることができたのも、この空間の慰めがあったからである。この空間が与えてくれたエネルギーがあったからである。
・ あれから、今日まで、ことあるごとに何度も何度も自分に、家族に!もう一度行ってみたいNO1の居場所を語ったことだろう。
・ 行けるようでなかなか行けない!そんな中途半端さをいつも引きずっていた。
・ そんな今年のお盆休みに子供夫婦が孫3人を連れて私たち夫婦を誘ってくれた。
・ 7名での行軍である。
・ 自転車では4日かけて行った奥入瀬渓流まで車で直行すれば7時間と言われている。しかしこのたびは寄り道したので14時間かかった。(朝5:30出発~夜7:30到着:途中ナマハゲ館・大館樹海ドームを見ながらの余裕であった)
・ 星野屋旅館の夕飯予約を一時間も遅れてしまったが、翌朝は朝食前1時間ほど散策した。
・ あの時の同じ空気の匂いが残っている。
・ 朝食後は孫も歩かせて2.5時間かけて43年分の記憶を飲み込んでくることができた。
・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・念願がなかった。距離や時間から考えてもそんな大げさの旅でもないのに!と思われるかもしれないが、私にとっては30日北海道一人自転車旅行を支えてくれた大きなエネルギーであったことに間違いはないことを確認することができたようだ。
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* 20160812(金):
・ 男鹿真山伝承館:ナマハゲ
・ 大館樹海ドーム:伊東豊雄建築設計事務所
・ 奥入瀬:星野リゾート
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* 20160813(土):
・ 奥入瀬渓谷散歩
・ 青森県立美術館:青木淳設計
・ 三内丸山遺跡:三内まほろばパーク :梓設計
・ 黒石ほるぷ子ども館:菊竹清訓設計
・ 田町武家屋敷ホテル
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* 20160814(日):
・ 角館武士屋敷巡り
・ 新潮社記念文学館+西宮家・安藤醸造本店
・ 武家屋敷:目黒家
・ 角館歴史村:青柳家
・ 国際教養大学:中島記念図書館:仙田満設計事務所
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* 白神山地:世界遺産登録地域:さすがに広大なブナ林である。奥入瀬渓流の源なのだろう!